アトピー性皮膚炎に対するマグネシウムの効果
ここに国立医療研究センターのアトピー性皮膚炎の概要を転載します。
アトピー性皮膚炎とは、かゆみのある湿疹が、慢性的に良くなったり悪くなったりを繰り返す病気です。アトピー性皮膚炎では、皮膚の“バリア機能”(外界のさまざまな刺激、乾燥などから体の内部を保護する機能)が低下していることが分かっています。そのため、外から抗原や刺激が入りやすくなっており、これらが免疫細胞と結びつき、アレルギー性の炎症を引き起こします。また、かゆみを感じる神経が皮膚の表面まで伸びてきて、かゆみを感じやすい状態となっており、掻くことによりさらにバリア機能が低下するという悪循環に陥ってしまいます。
悪化要因
アトピー性皮膚炎を悪化させる要因は、1つの要因だけでなく、以下のような様々な要因が重なり合って起こることが多いため、これらの悪化要因の対策を行うことも治療を行う上で大切なことになります。
悪化要因の例
・黄色ブドウ球菌 ・ダニ ・カビ ・汗 ・ペット ・ストレス など
アトピー性皮膚炎と食物アレルギー
かつては、食物アレルギーがある子がアトピー性皮膚炎を発症すると考えられていました。しかし近年は、湿疹がありバリア機能が低下している皮膚から食物が入り込むことによって、食物アレルギーが発症するという仕組みが分かってきました。
当院で行われ、2016年に発表された研究結果からは、アトピー性皮膚炎のある乳児に対しその湿疹をしっかり治療しながら加熱鶏卵を少量ずつ経口摂取させることで、卵アレルギーの発症を減少させることができることがわかりましたが、アトピー性皮膚炎の治療が十分でなかった場合には効果が低いことがわかりました。このことからも、早い時期から正しい治療を行い、皮膚を良い状態に保つことが大切だといえます。
アトピー性皮膚炎のいろいろな記事を見ていますと、アトピー性皮膚炎の患者の暗澹とした気持ちがよく理解できる気がします。それにしても、最近の(西洋)医学では、糖尿病、高血圧、アレルギー等いわゆる現代病はほとんど現状維持が最善とばかりです。今までになかった症状なのだから、何か原因があり、それを見つければ治癒するのではないか、医学界こそパラダイムシフトが必要ではないかと考えてしまいます。
アトピー性皮膚炎の治療として、ステロイドを塗り続ける外用療法しかなく、これで治癒する若しくは軽減されればいいのですが、治癒しないどころか、副作用が避けられないのが現状のようです。
ステロイド塗布はアトピー性皮膚炎に効果があるのか?
アトピー性皮膚炎と診断され、長年ステロイドを塗布し続けている患者の方の多くが疑問に感じておられると思います。実際、世界的には下記のような報告があります。
一般に、ステロイドの塗布は、アトピー性皮膚炎の第一選択の治療です。しかし、それらを長期間使用すると、皮膚バリアの悪化につながる可能性があり、アトピー性皮膚炎の重要な病因因子と言われています。
さらに、最近の研究では、強力なステロイド塗布による治療が天然保湿因子(Natural moisturizing factors; NMF)レベルの低下につながり、長期的には、皮膚の水分補給の低下、抗菌防御の低下、皮膚の炎症状態の悪化につながるが示されています。
( ・McAleer MA, et al. The multifunctional role of filaggrin in allergic skin disease. J Allergy Clin Immunol 2013; 131: 280–291. ・Danby SG, et al. The effect of tacrolimus compared with betamethasone valerate on the skin barrier in volunteers with quiescent atopic dermatitis. Br J Dermatol 2014; 170: 914–921.)
いろいろ調べてみるとアトピー性皮膚炎はセラミドの合成障害との記載がありました。ここにマグネシウムの可能性を見出しました。
お肌のセラミドとバリア機能
肌の角質細胞の間を埋める「細胞間脂質」の50%を占めるのが「セラミド」です。
「セラミド」は水分保持機能を持ち、外部刺激からのバリア機能をサポートしています。
肌の潤いを支えている大切な成分です。
セラミドはどのようにつくられる?
● セリンとセリンパルミトイルCoAを出発物質とし、様々な酵素の働きにより顆粒細胞内にセラミドは産生されます。
● スフィンゴミエリン合成酵素およびグルコシルセラミド合成酵素の働きにより顆粒細胞内のセラミドはスフィンゴミエリンおよびグルコシルセラミドに変換され、コレステロールやリン脂質などと一緒に層板顆粒内に貯蔵されます。
● 顆粒細胞から角質細胞への分化の際にスフィンゴミエリンやグルコシルセラミドは層板顆粒から細胞外に分泌され、スフィンゴミエリナーゼ(Sphingomyelin phosphodiesterase:SMPD)やβ-グルコセレブロシダーゼ(β-glucocerebrosidase:GBA)の働きによって再びセラミドとなります。
マグネシウムは何故セラミドを増やせる?
● 酵素活性を示すタンパク質である「スフィンゴミエリナーゼ」は、複合脂質の「スフィンゴミエリン」のリン酸エステル結合を加水分解して、生理活性を持つ脂質「脂質メディエータ」の「セラミド」と「フォスフォコリン」を産生します。また、アトピー性皮膚炎などに影響を与える皮膚のセラミドの含有を左右させる酵素としても知られています。
● スフィンゴミエリナーゼが加水分解活性能力を発揮するためには、マグネシウムイオンの存在が必須です。※理化学研究所発表(2006/5/11)金属イオン・水・アミノ酸の架け橋は脂質を切るはさみ - 酵素「スフィンゴミエリナーゼ」の謎の反応機構を解明 –(※後半に資料添付)
●スフィンゴミエリンが多量に顆粒細胞から分泌されても、分解酵素であるスフィンゴミエリナーゼがマグネシウム(Mg)イオンを保持出来なければ、セラミドにならないわけです。
マグネシウムイオン量がセラミド産生量の大きなファクターになります。
マグネシウムイオンバブル効果(イメージ)
Mgイオンは本当に浸透してる?
Mg-TERRASTから溶出するMgイオンの効果を確認するため、10人余りの方に半年ほど前から「Mg+シャワー」を使用いただいております。また、アトピー性皮膚炎の効果も確認するため、15人の方に、1年余り前からお風呂でのMgイオン溶出装置を使用いただいております。
1)「Mg+シャワー」使用例
試験利用いただいているご家族のお嬢様(高校生)の変化の写真をいただきました。
2)「Mg+風呂」使用例
アトピー性皮膚炎の方には、Mgイオン濃度を上げ、時間をかけて経皮吸収していただくために、Mgイオン浴槽利用していただいています。30代後半男性、利用し始めて2週間後の写真をいただきました。
アトピー性皮膚炎の15人の方々の使用結果には個人差がありますが、共通していたのは、今年(2020年)初めての夏を過ごし、汗をかいても以前ほど痒くならないことでした。
参考資料
1)東京慈恵会医科大学の横田邦信先生の著書『マグネシウム健康読本』 (現代書林・2006年)の「セラミドの合成・産生を高め、アトピー性皮膚炎を改善する」章からの引用
アトピー性皮膚炎で悩んでおられる方は少なくありません。アトピー性皮膚炎の原因の一つに、戦後の食生活の変化、社会環境の変化との関連が考えられています。とくに食生活では、穀物の大幅な摂取量の減少にともなうマグネシウムの摂取量の減少が強く関連していると考えられます。
現在のアトピー性皮膚炎の治療は、ステロイド外用薬などの薬物療法、アレルゲンなど悪化因子の除去、それにスキンケアの3種類が主体になっています。スキンケアの目的は皮膚の機能異常の補正で、アトピー性皮膚炎で炎症のないところの皮膚は、正常の皮膚と異なって乾燥しています。そのため、皮膚(角質層)のバリア機能の低下が見られます。
アトピー性皮膚炎の大きな悩みは、痒みです。痒みを感じやすくなっているために、発汗、温度や湿度の変化、石鹸やシャンプーに含まれる界面活性剤といったわずかな刺激で痒みを感じます。さらに、精神的ストレスによっても痒みを生じます。
痒みのために掻いてしまうと、皮膚のバリア機能は破綻します。こうなると、アレルゲンを含む刺激物質の皮膚からの侵入も容易になり、皮膚の炎症が起こりやすくなります。また、細菌感染も引き起こしやすくなります。
こうした点から、アトピー性皮膚炎ではスキンケアが大切になります。スキンケアのなかでも、保湿が重要です。
保湿薬の機能として、次のような作用が求められます。
(1)角質層をやわらかくする作用
(2)水分を保持する作用
(3)皮膚バリア機能を強化する作用
ただし、現在、この3点を全て備えた保湿薬はありません。
皮膚には角質細胞同士を結合し、皮膚を丈夫にするセラミド(角質細胞間脂質)があります。特に、アシルセラミドの減少がアトピー性皮膚炎の乾燥皮膚の原因になっていることが証明されています。セラミドを配合した保湿薬も出まわっていますが、それは皮膚バリア機能に重要な役割を果たすアシルセラミドではありません。そのために、大きな効果は期待できないのが現状です。
そこで期待をかけたいのが、マグネシウムです。マグネシウムは保湿効果が強く、また、マグネシウムの作用によって、アシルセラミドの合成が高まり、皮膚のバリア機能が回復してくるからです。セラミドは、皮膚の近くで合成されます。セラミドを効率的に合成しようとすれば、体内にマグネシウムを十分に取り込むことが近道になります。
2)独立行政法人 理化学研究所・徳島文理大学の研究発表 2006/5/11
金属イオン・水・アミノ酸の架け橋は脂質を切るはさみ
- 酵素「スフィンゴミエリナーゼ」の謎の反応機構を解明 –
独立行政法人理化学研究所(野依良治理事長)は、細胞膜を構成する複合脂質から、様々な細胞機能の調節に関与する脂質メディエータ※1を生産する「スフィンゴミエリナーゼ(SMase)」の立体構造を解明し、酵素反応に関する新しいメカニズムを提唱しました。
毒性が強い食中毒菌として知られる「セレウス菌(Bacillus cereus)」由来の「中性スフィンゴミエリナーゼ(Bc-SMase)」は、スフィンゴミエリン内のリン酸エステル結合※2を加水分解※3し、赤血球を破壊する溶血活性を示します。同時に、動物細胞内在性の「中性スフィンゴミエリナーゼ(nSMase)」と同様に、動物細胞の分化、老化、アポトーシス※4を引き起こします。これらBc-SMaseを含むnSMaseが加水分解活性能力を発揮するためには、マグネシウムイオンの存在が必須ですが、なぜ金属イオンがマグネシウムイオンでなければならないのか、また金属イオンがどう働くのかは、酵素発見から四半世紀の間、謎のままでした。
研究グループは、酵素の加水分解活性に与える影響の異なる金属イオンが結合したBc-SMaseの立体構造を、大型放射光施設SPring-8※5を用いて解析しました。その結果、Bc-SMaseが高い触媒活性を示すためには、Bc-SMaseの活性中心にあるグルタミン酸とヒスチジンの2つのアミノ酸のそれぞれに、1個の水分子を間に挟み込んだ2個の金属イオンが結合する事が必要である事を明らかにしました。このリン酸エステル加水分解反応の基であるBc-SMaseで見つかった二つの金属イオンからなる構造は、他のリン酸エステル加水分解活性を持つ様々な酵素の触媒活性もうまく説明する事ができます。
さらに、今回決定した三次元構造に基づきデザインした変異型Bc-SMaseを作成して解析し、バクテリア由来酵素の特徴である溶血活性に必須である細胞膜への結合には、アミノ酸「トリプトファン」と「フェニルアラニン」が重要であることを明らかにしました。
こうした反応と構造の関係は、セレウス菌由来のみならず、動物に存在する中性スフィンゴミエリナーゼにも共通します。スフィンゴミエリナーゼは、「スフィンゴミエリン」という複合脂質を分解して、健康な皮膚を保つのに必要な「セラミド」を生成するので、今回の結果から、美肌効果をもつ化粧品や、アトピー性皮膚炎の治療薬開発が可能になるかもしれません。
本研究成果は、米国の科学雑誌『The Journal of Biological Chemistry』(6月9日号)に掲載される予定です。
<補足説明>
※1 脂質メディエータ
生理活性脂質のうち、生体内で生産され、その受容体を介して生体機能を変換する脂質。反応などを仲介、伝達しているように見えることからメディエータの名が付いた。
※2 リン酸エステル結合
リン酸一分子とアルコール一分子が脱水縮合して出来る結合。
※3 加水分解
脱水縮合して出来た結合に水一分子を付加することで、その結合を切断する反応。
※4 アポトーシス
生物の体をより良い状態に保つために引き起こされる細胞の自殺のこと。一方、血行不良、外傷などによる細胞死は、ネクローシスと呼ばれる。
セラミドを作る酵素でのマグネシウムの役割が解明されました。
この研究結果で、アトピー性皮膚炎の治療薬開発に期待する文章がありますが、2020年現在まだ発売されていないようです。
3)その他
・マグネシウムは、セラミドの合成、表皮の増殖と分化の調節に関与しています。
Clarke CJ, et al. The neutral sphingomyelinase family: identifying biochemical connections. Advn Enzyme Reg 2011; 51:51-58. ・Okazaki T, et al. Characteristics and partial purification of a novel cytosolic, magnesium-independent, neutral sphingomyelinase activated in the early signal transduction of 1 alpha,25-dihydroxyvitamin D3-induced HL-60 cell differentiation. J Biol Chem 1994; 269: 4070-4077.
・「マグネシウムに富む水での入浴」は、乾燥したアトピー性皮膚の皮膚バリアに有益な効果があることが示されています。
van Smeden J, et al. The importance of free fatty acid chain length for the skin barrier function in atopic eczema patients. Exp Dermatol 2014; 23: 45-52.
・マグネシウムに富む死海塩による局所治療は、乾性およびそう痒性皮膚病において有益な効果を示しました。
Proksch E, et al. Skin barrier function, epidermal proliferation and differentiation in eczema. J Dermatol Sci 2006; 43:159–169.